医療的要素を取り入れたフィットネス施設であるメディカルフィットネス施設は、厚生労働大臣認定の「健康増進施設」の認定を受けることで、さまざまなメリットがあります。本記事では、運動型健康増進施設などの厚生労働省の認定制度の概要と、メディカルフィットネス施設が認定を取ることの意義についてご説明します。

健康増進施設認定制度

国民の健康づくりを推進するため、厚生労働省は健康増進施設認定規定を設け、適切な施設を認定・普及しています。現在、「運動型健康増進施設」「温泉利用型健康増進施設」「温泉利用プログラム型健康増進施設」の3種類の施設を認定しており、さらに一定の条件を満たした施設を「指定運動療法施設」として認定しています。

運動型健康増進施設

運動型健康増進施設は、健康増進のための有酸素運動を安全かつ適切に行える施設です。これにはトレーニングジム、運動フロア、プールの全部または一部の設備が含まれます。公益財団法人日本健康スポーツ連盟が調査を行っています。

温泉利用型健康増進施設

温泉利用型健康増進施設は、健康増進のために温泉利用および運動を安全かつ適切に行える施設です。運動施設と温泉利用施設を備えています。医師の指示に基づいて治療のために温泉療養を行った場合、一定の条件の下で施設利用料が医療費控除の対象となります。

温泉利用プログラム型健康増進施設

温泉利用プログラム型健康増進施設は、温泉利用を中心とした健康増進プログラムを提供し、安全かつ適切に実施できる施設です。

温泉利用健康増進施設および温泉利用プログラム型健康増進施設に関する詳細は、公益財団法人日本健康開発財団のホームページをご覧ください。

今回は主に運動型健康増進施設についてご紹介します。

運動型健康増進施設

運動型健康増進施設の制度内容

国民の健康意識を高め、活気ある生涯スポーツ社会の実現と健康寿命の延伸を目的に策定された運動型健康増進施設制度は、公益財団法人日本スポーツ連盟が調査し、厚生労働省が認定を行っています。

厚生労働省によると、2024年4月時点で運動型健康増進施設は348件あります。

厚生労働省 運動型健康増進施設一覧

日本健康スポーツ連盟への調査申請から厚生労働省の認定までは、早くても約3ヶ月かかり、10年ごとに認定の更新が必要です。

認定にかかる費用としては、調査費8万円と現地調査のための交通費や人件費が必要です。認定後、認定を受けたことを示す認定パネルを申し込むことで、認定マークを広報などに利用することが可能になります。

メディカルフィットネス施設と運動型健康増進施設

メディカルフィットネス施設が健康増進施設の認定を取ることは必須ではありません。しかし、認定を取得することで多くのメリットがあります。

認定基準とその利点

健康増進施設の認定基準には、医療機関との適切な提携関係を有していることや、健康運動指導士およびその他の運動指導者の配置が含まれています。これにより、利用者に対して効果的な運動指導が行いやすくなります。認定基準に沿った設備や人員の配置によって、利用者に寄り添ったサービスを提供できることが期待されます。

信頼感と差別化

厚生労働大臣の認定を取得することで、利用者に信頼感や安心感を与えることができ、他のスポーツクラブやジム、フィットネス施設との差別化にもつながります。これにより、集客面での効果が期待できます。

指定運動療法施設のメリット

運動型健康増進施設の認定を取得した後、一定の条件を満たすと、指定運動療法施設の指定を受けることができます。指定運動療法施設では、条件を満たす利用者の施設利用料が医療費とみなされ、所得控除を受けることができます。これにより、利用者にとっての税制上のメリットが生まれます。

医療機関との連携

指定運動療法施設の指定を取得することで、医療機関と連携する仕組みが整い、利用者に対してより包括的な健康支援を提供することができます。内外の諸条件を満たすことができれば、指定運動療法施設の指定も取得することをおすすめします。

メディカルフィットネス施設が健康増進施設の認定を取得することは、利用者に対して信頼感を与え、集客力を高めるだけでなく、医療機関との連携を強化し、地域の健康支援に貢献する重要なステップです。

健康増進施設の認定には運営前からの準備が大切

メディカルフィットネス施設の開業を計画している段階で、運動型健康増進施設の認定も検討し、取得を目指す場合は、あらかじめ認定基準を把握しておくことが重要です。

運動型健康増進施設には、設備や有資格者の配置など多くの条件があります。開業後に認定を取ろうとして、設備に不備があった場合、後から追加するのが難しくなり、認定取得が困難になるリスクがあります。こうした問題を避けるためにも、開業前に認定を取るかどうかを検討する必要があります。

そのためには、認定基準や取得の流れをしっかりと理解しておくことが大切です。

運動型健康増進施設の申請から認定取得までの流れ

認定ステップ
出典:公益財団法人 日本健康スポーツ連盟

運動型健康増進施設の申請を行う際には、まず日本健康スポーツ連盟に事前協議申請を行います。

この事前協議では、施設の機器や健康運動指導士などの人員配置に問題がないかを日本健康スポーツ連盟が審査します。不備があれば改善し、その後で日本健康スポーツ連盟に施設の調査を依頼します。連盟は施設の現地調査を実施します。

問題がなければ、日本健康スポーツ連盟が厚生労働省に運動型健康増進施設の申請を行い、厚生労働省が認定を行います。

事前協議申請を出してから認定が下りるまでには、約3ヶ月かかるとされています。申請内容に不備があればさらに時間がかかることもあります。

申請のタイミングは、メディカルフィットネス施設の開業前でも開業後でも可能です。ただし、申請時に施設のパンフレットや図面、写真などを提出する必要があるため、開業前に申請する場合でも必要なものが揃ってから行う必要があります。開業後に申請する場合でも、認定を見据えて開業前から準備を整えることが望ましいです。

運動型健康増進施設の認定

認定基準は、主に以下の6点です

  1. 安全な設備の配置
    • 有酸素運動や筋力強化運動などが安全に行える設備(トレーニングジム、運動フロア、プールの全部または一部と付帯設備)が必要です。
  2. 体力測定や応急処置の設備
    • 体力測定、運動プログラム提供、および応急処置のための設備が必要です。
  3. 生活指導のための設備
    • 生活指導を行うための設備を備えていることが求められます。
  4. 運動指導者の配置
    • 健康運動指導士およびその他の運動指導者を配置する必要があります。
  5. 医療機関との提携
    • 医療機関との適切な提携関係を有していることが求められます。
  6. 継続的な利用者指導
    • 健康状態の把握、体力測定、運動プログラムなど、継続的な利用者指導を適切に行っていることが必要です。

申請の際には、運動設備としてウエイトトレーニング機器の種類や運動フロアの床面の構造・材質の明記が求められます。また、メディカルフィットネス施設の利用料金体系、提携医療機関に委託する業務内容、職員の勤務状況など、記載事項は多岐にわたります。

医療費控除のメリット:税の恩恵

指定運動療法施設認定と医療費控除:利用料が税額控除に

運動型健康増進施設の認定を受けた後、いくつかの条件を満たすことで、指定運動療法施設の指定を受けることができます。

メリット

指定運動療法施設の指定を受けることで、医療機関との連携が強化され、利用者に提供できるサービスの質が向上します。もう一つの大きなメリットは、メディカルフィットネス施設で運動療法を受けた利用者が医療費控除を受けられるようになることです。

医療費控除とは

医療費控除は、年間で10万円以上の医療費を支払った場合に、所得税が安くなる制度です。

条件と手続き

指定運動療法施設では、医師が出す運動療法処方箋に基づいて運動プログラムを作成し、運動療法を実施します。この場合、一定の条件を満たせば、施設利用料が医療費控除の対象となります。これにより、利用者の所得税や住民税の負担が軽減されます。

医療費控除の条件

医療費控除を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 運動型健康増進施設の認定を取得していること
  • 指定運動療法施設の認定を取得していること
  • 運動療法にかかる費用が1回あたり10,000円以下であること

これらの条件を満たすことで、利用者は運動プログラムの費用を医療費として控除でき、大きなメリットを享受できます。

指定運動療法施設:制度内容と認定基準

メディカルフィットネス施設で医師の指導のもと運動療法を実施し、その施設利用料について利用者が医療費控除を受けるためには、厚生労働省指定の指定運動療法施設の指定を受ける必要があります。

指定運動療法施設の条件

指定運動療法施設の指定を受けるための条件は以下の4つです。

  1. 厚生労働大臣認定の健康増進施設であること
  2. 提携医療機関の担当医が、日本医師会認定の健康スポーツ医であること
  3. 健康運動実践指導者が配置されていること
  4. 運動療法の実施にかかる料金体系が設定されていること(1回あたり10,000円以内)

申請と取得までの期間

運動型健康増進施設の認定を受けた後、2~3ヶ月で指定運動療法施設の申請が可能になります。申請後、指定を受けるまでにはさらに2~3ヶ月かかります。したがって、運動型健康増進施設と指定運動療法施設の両方の認定・指定を受けるには、約1年程度の期間を見ておく必要があります。

認定・指定を取るまでの道のりは決して短くありませんが、これらを取得することは、利用者の健康維持・増進に大いに役立ちます。

指定運動療法施設を利用後の医療費控除プロセス

図1:運動療法の医療費控除の手順を示す図
出典:健康長寿ネット

指定運動療法施設で医療控除を受けるには、以下の手順を踏む必要があります。

  1. 運動療法処方箋の交付
    • まず、提携医療機関で医師から運動療法処方箋を受け取ります。
  2. 運動療法の実施
    • 指定運動療法施設の認定を受けた運動施設で、運動療法を週1回以上、8週間以上にわたって実施します。
  3. 領収書と実施証明書の取得
    • 運動施設は、1回あたり10,000円以下の領収書と、運動療法を実施したことを証明する実施証明書を利用者に発行します。
  4. 経過観察と確認書の交付
    • 提携医療機関は利用者の経過を観察し、実施証明書の確認書を交付します。
  5. 確定申告
    • 利用者は、税務署に領収書と実施証明書を提出して確定申告を行います。これにより、施設利用料が医療費控除の対象となります。

この手順を踏むことで、利用者は運動療法にかかる費用を医療費として控除することができ、所得税や住民税の負担を軽減することができます。

メディカルフィットネス開業前必見!健康増進施設の認定制度を徹底解説のまとめ

メディカルフィットネス施設が運動型健康増進施設や指定運動療法施設の認定・指定を取ることは、利用者が安心して施設を利用するために大きな意味を持ちます。

特に、指定運動療法施設の指定を取ることで、一定の条件を満たす利用者の利用料が医療費控除の対象となるため、このメリットをアピールしやすくなります。

また、厚生労働大臣認定・厚生労働省指定のメディカルフィットネス施設として、他のスポーツジムなどと大きく差別化でき、プロモーションや集客にも効果が期待できます。

厚生労働大臣認定の運動型健康増進施設や厚生労働省指定の指定運動療法施設の認定・指定を取るかどうか、またいつ取るかは、メディカルフィットネス開業前の計画段階から慎重に検討することが必要です。事前準備をしっかり行うことが、理想的なメディカルフィットネス施設の開業・運営には重要です。


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