一般的なフィットネス施設(スポーツクラブ、フィットネスクラブ、スポーツジムなど)が新しくメディカルフィットネス施設を開業する場合や、既存のフィットネス施設をメディカルフィットネスに改装する場合には、医療的な要素をどう取り入れるかなど、いろいろな課題があります。本記事では、フィットネス施設がメディカルフィットネス施設を開業・運営する際に考慮すべきポイントをご紹介します。

メディカルフィットネスと一般フィットネス:医療的要素がもたらす大きな違い

メディカルフィットネスは、狭義には医療法人が運営するフィットネスを指し、広義には医療的要素を取り入れたフィットネス全般を指します。つまり、メディカルフィットネスの運営母体は医療法人だけでなく、一般企業も運営することが可能で、一般的なフィットネス施設がメディカルフィットネスにリニューアルすることもできます。

医療的要素の取り入れ方

どのように医療的要素を取り入れるかは、どのようなメディカルフィットネス施設を目指すかによって様々です。以下のような方法が考えられます。

  1. 専門スタッフの配置:
    • 健康運動指導士、健康運動実践指導者、理学療法士、柔道整復師などの資格を持つスタッフを配置し、利用者に対して専門的な運動指導を行います。
  2. 医療機関との提携:
    • 病院や診療所などの医療機関と提携し、医学的エビデンスに基づいた運動指導を提供します。
  3. 個別対応:
    • 利用者一人ひとりの健康状態を把握し、定期的な体力測定や運動プログラムの見直しを行うことで、継続的かつパーソナライズされた運動指導を実施します。
  4. 生活指導の提供:
    • 運動指導だけでなく、生活指導も行い、利用者の健康維持増進を多面的にサポートします。

これらの取り組みを通じて、利用者に対して質の高いサービスを提供し、健康維持や改善を目指すことができます。

一般的なフィットネス施設をメディカルフィットネス施設にするために、資格取得や届け出、認定が必ず必要になるわけではありません。しかし、医療機関との連携や有資格者による医学的エビデンスに基づく指導を行う場合、厚生労働大臣認定の「健康増進施設」や「指定運動療法施設」の認定を取得することをお勧めします。

認定取得のメリット

  1. 差別化:
    • 厚生労働大臣の認定を受けることで、他のフィットネス施設との差別化が図れます。
  2. サービスの質の向上:
    • 認定を受けることで、提供するサービスの質が向上し、利用者の安心感も増します。
  3. 医療控除のメリット:
    • 「指定運動療法施設」の認定を取得すると、要件を満たす利用者は施設利用料の医療控除を受けられます。これは、利用者にとって大きなメリットとなります。

メディカルフィットネスの特徴

医学的エビデンスに基づいた運動指導を行えることが、医療的要素が加わったフィットネスであるメディカルフィットネスの特徴のひとつです。

メディカル化がもたらすメリット:市場拡大と顧客満足度の向上

既存のフィットネス施設をメディカルフィットネスに改装する場合や、新しくメディカルフィットネス施設を開業する場合、まずはコンセプトをしっかり決めることが大切です。

施設の方針、広さ、周りの環境(人口や年齢層、競合施設など)、現在のスタッフの活用状況などを考慮して、進むべき方向を決めましょう。また、経営陣が「なぜメディカルフィットネスを始めるのか」「地域の皆さんにどんな価値を提供したいのか」を明確にすることがスタート時点で最も重要です。

その後、ターゲットとなる利用者、提供するサービスの内容、サービスの提供方法を詳しく考えることで、施設に必要な医療的要素が見えてきます。コンセプトがはっきりしたら、必要な設備や、厚生労働大臣認定「健康増進施設」や「指定運動療法施設」の認定を取るかどうかを判断しましょう。

これらの認定を取る場合は、準備段階から注意が必要なので、早めに方針を決めることをお勧めします。

既に運営している一般的なフィットネス施設をメディカルフィットネスに変える場合、フィットネス設備や人員、運営に関するノウハウが既にあること、そして既存の会員がいることは大きな強みとなります。事前に決めたコンセプトに基づき、必要な設備の追加や変更、認定取得に向けた準備に集中することで、効率的に開業準備を進めることができます。

特に、フィットネス施設で既に経験を積んだスタッフがいることは、採用コストを削減する大きなメリットです。まずは、既存のスタッフの中にメディカルフィットネスに関する知識や資格を持つ人がいないか確認しましょう(健康運動指導士、健康運動実践指導者、理学療法士、柔道整復師、アスティックトレーナー、栄養士、保健師など)。また、スタッフの知り合いに有資格者がいる可能性も考慮してください。

人材の確保は施設運営にとって重要な課題です。既存のスタッフやその人脈を最大限に活用することが、成功への鍵となります。

新戦略:未開拓市場へのアプローチ

多くの人がフィットネスに参加することは、フィットネス業界の発展や国民の健康寿命の延伸、医療費の抑制につながります。日本のフィットネス人口を増やすことは、フィットネス業界だけでなく、社会全体の課題と言えるでしょう。

メディカルフィットネスでは、医学的エビデンスに基づいた運動指導を行うため、基礎疾患を持つ方や運動経験がない方も安心して通えます。そのため、これまでスポーツクラブやジムに行かなかった層に対してもフィットネス参加を後押しでき、フィットネス人口の増加に寄与します。

メディカルフィットネスの運営は、一般的なフィットネス施設と比べて利用者一人ひとりに対する細やかなサービスの提供や医療連携など、準備や運営に手間がかかります。しかし、地域の健康課題の解決に貢献できるとともに、新たなターゲットにアプローチできるという経営的なメリットもあります。

現在フィットネス施設を運営している方は、メディカルフィットネス化についても検討してみてはいかがでしょうか。

未来への投資:これからの時代にはメディカルフィットネス

コロナ禍の運動不足とその影響

新型コロナウイルスの流行により2020年から外出自粛が続き、運動の習慣があった人も運動不足に悩むようになりました。運動不足が続くと、免疫力の低下、体重増加、生活習慣病の悪化などのリスクが高まります。また、運動機会の減少により気持ちが落ち込みやすくなり、うつ病や認知症の発症・悪化の恐れもあります。特に高齢者は、ロコモティブシンドロームの進行により要介護や寝たきりになるリスクが高まる懸念があります。

健康二次被害とメディカルフィットネスの役割

運動不足によって引き起こされる心や体の不調は、健康二次被害と呼ばれます。健康二次被害によって、傷病の発生・悪化リスクが高まることを抑制するためにも、一人ひとりの年齢、体質、体力、既往症などを把握した上で、適した運動を行うことが大切です。ここで、メディカルフィットネスが果たす役割は非常に大きいと言えます。

メディカルフィットネスの普及とその重要性

一般的なフィットネス施設がメディカルフィットネス化することで、運動を必要としているより多くの人に運動指導を提供できるようになります。超高齢社会を迎えた日本で、健康寿命の延伸という課題に対して、メディカルフィットネス施設が重要な役割を担っていくことでしょう。

まとめ

メディカルフィットネスは、健康な方だけでなく、病気を経験した方にも運動指導ができるため、医療費の削減など、社会的な問題の解決にも役立ちます。既にフィットネス施設を運営している場合、トレーニングマシンの知識や運営のノウハウがあるため、メディカルフィットネス施設の開業やリニューアルは比較的簡単に行えるでしょう。

とはいえ、メディカルフィットネス化を考える際に、「何から始めればいいのか」「厚生労働大臣認定の健康増進施設や指定運動療法施設を取得すべきか」「取得するための要件は何か」など、施設ごとに考え方や進め方が異なります。

株式会社BHMでは、フィットネス施設の運営者がメディカルフィットネスを開業する際や、既存の施設をメディカルフィットネス化する際のお手伝いをしています。どうぞお気軽にお問い合わせください。


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