柔道整復師と接骨院の直面する課題:解決策と未来への展望

柔道整復師とは、ねんざ・打撲・脱臼などのけがに対して、薬や手術を使わずに主に手技で治療を行う国家資格を持つ専門家です。彼らが働く場所は、接骨院(整骨院・治療院)と呼ばれます。

厚生労働省の平成30年の衛生行政報告例によると、2008年に43,946人だった柔道整復師の人数は、2018年には73,017人に増え、10年間で約1.6倍に増加しています。一方、柔道整復を行う施術所の数は2008年に34,839件、2018年には50,077件で、1.4倍ほど増加していますが、柔道整復師の増加率ほどではありません。

また、接骨院1院あたりの柔道整復師の平均人数は2008年には1.26名、2018年には1.46名となり、複数の柔道整復師がいる接骨院が増えてきていますが、多くの接骨院は1名の柔道整復師が運営している小規模なものです。

接骨院が増加したことで、利用者が分散し、1院あたりの利用者数は減少することが予想されます。さらに、国家資格を必要としないリラクゼーション施設など、接骨院と競合する施設も増えてきています。

接骨院とその競合施設は増加していますが、鍼灸やマッサージを含む柔道整復市場は縮小傾向にあります。2014年の5,580億円をピークに、市場規模は年々縮小しており、2018年には4,810億円と、4年間で13.8%減少しています。

さらに、接骨院は柔道整復師法によって広告宣伝が制限されています。そのため、積極的なプロモーションが難しく、集客に苦戦する接骨院も多いのではないでしょうか。

厳しい状況が続く中で、接骨院が安定した運営を続けるためには、他の施設と差別化できるサービスを考えることが重要です。例えば、専門的な施術や個別対応のプログラム、最新のリハビリ機器の導入など、独自の魅力を打ち出すことで、顧客の信頼と支持を得ることが求められます。

接骨院の強みを活かす!差別化を図る方法

接骨院が他の施設と差別化を図る方法の一つに、院内で行う施術の一部を保険適用外の自費施術に移行することがあります。自費施術は、施術内容や期間に制限がないため、利用者一人ひとりの悩みに寄り添った施術を提供しやすいという特徴があります。

保険適用内の施術では、施術内容や方法、期間に制限があるため、時には利用者の希望に応えられないこともあります。しかし、自費施術として提供することで、接骨院と利用者がより深いコミュニケーションをとりながら、利用者の希望を叶えることができ、満足度を上げることが可能になります。

接骨院が取り入れられる自費施術メニューの一つに、歩行訓練や関節可動域回復訓練などの運動療法があります。運動療法は、痛みや不調の緩和だけでなく、けがや病気の予防にも効果的です。健康の維持・増進に関心がある方にも、接骨院を利用していただける可能性があります。

また、高齢化が進む現在、ロコモティブシンドロームやフレイルを予防する取り組みが求められています。接骨院が運動療法に取り組むことで、地域の健康増進の一翼を担うことができるでしょう。これにより、接骨院は地域社会に貢献しながら、利用者の信頼と支持を得ることができます。

運動療法からメディカルフィットネス施設併設への変革

ここでは、運動療法を取り入れた接骨院がメディカルフィットネス施設を併設する場合の考え方についてご紹介します。

メディカルフィットネスは、狭義では医療法人が運営するフィットネス施設、広義では医療的要素を取り入れたフィットネス施設を指します。これらの施設では、予防医療や未病の観点から運動指導を行うことができます。柔道整復師は骨や筋肉などの運動器に関する知識を持ち、けがへのアプローチや体の機能を改善させる運動療法の知識があるため、メディカルフィットネスとの相性が良いと言えます。

利用者にとって、施術から運動までを一つの施設で行えることは大きなメリットです。接骨院とメディカルフィットネス施設が利用者の体の状態を共有することで、利用者に合わせた施術や運動の提案がしやすくなり、より利用者に寄り添ったサービスが提供できます。

たとえば、利用者が日常生活でけがをした際、けがの回復を接骨院が担い、回復後の筋力維持・パフォーマンス向上をメディカルフィットネスがサポートするなど、それぞれの特性を活かした連携が可能です。連携を深めることで、相互にサービスの質を向上させることが期待されます。

メディカルフィットネス施設を併設することで、接骨院は利用者に包括的なケアを提供し、利用者の満足度を高めることができるでしょう。

接骨院とメディカルフィットネスの融合:医療連携が成功の鍵

既存の接骨院がメディカルフィットネス化する、または接骨院がメディカルフィットネス施設を併設する場合、まずは施設のコンセプトを明確にすることが重要です。このコンセプトに基づいて内装や設備、規模などを決めていきます。最初にコンセプトを決め、その後で内装や設備を検討することが望ましいでしょう。

メディカルフィットネス施設を開業するために必須の資格や要件はありませんが、厚生労働大臣認定の「健康増進施設」や厚生労働省指定の「指定運動療法施設」の認定を取得することができます。これらの認定を取得することで、利用者に対するサービスの質を向上させることが可能です。

特に、「指定運動療法施設」の認定を受けると、一定の条件を満たす利用者の施設利用料が医療控除の対象となります。これは利用者にとって大きなメリットとなるため、要件を満たせる場合は認定取得を目指すことをお勧めします。

厚生労働大臣認定「健康増進施設」や「指定運動療法施設」の取得には、「医療機関との適切な提携関係を有していること」が求められます。医療機関との提携は簡単ではありませんが、提携することで利用者の信頼を得やすくなり、施設のプロモーションや差別化にも効果的です。そのため、認定を取得しない場合でも、可能な範囲で医療機関との提携を検討することをお勧めします。

接骨院が提携する医療機関としては、整形外科だけでなく内科や循環器科なども考えられます。メディカルフィットネス施設は、体に痛みや不調を抱える方への施術や運動療法を提供できますが、生活習慣病や糖尿病などの患者の状態を見ることは難しい場合もあります。内科・循環器科などの医療機関と提携することで、利用者の体の状態をより詳細に把握することが可能になります。

また、内科や循環器科の医療機関には、運動を必要とする患者が多くいますが、具体的な運動内容を指示するのが難しい場合があります。そうした医療機関と柔道整復師が所属するメディカルフィットネス施設が提携することで、適切な運動療法のサポートが可能となります。

厚生労働大臣認定「健康増進施設」や「指定運動療法施設」の認定を取得することで、接骨院はこれまでとは異なる利用者層にアプローチしやすくなります。提携先の医療機関は、運動療法をメディカルフィットネス施設に任せることで、患者の健康維持・増進をより効果的に支援できるようになります。異分野のプロフェッショナルが協力することで、利用者の健康により大きく貢献できるでしょう。

まとめ

接骨院の市場が縮小傾向にある現在、接骨院が安定した運営を行うためには、競合との差別化が重要です。その方法の一つとして、メディカルフィットネスの導入には様々なメリットがあります。接骨院がメディカルフィットネス施設を併設・運営することで、利用者の体の不調や悩みに対する施術だけでなく、運動療法の幅も広がります。

また、諸要件を満たすことができる場合は、厚生労働大臣認定「健康増進施設」や厚生労働省指定「指定運動療法施設」の認定・指定を取得することをお勧めします。これにより、利用者に対して質の高いサービスを提供し、施設の信頼性を高めることができます。

株式会社BHMでは、接骨院がメディカルフィットネス施設を併設する、あるいは新たに開業する際のお手伝いをしております。医療連携についてもサポートさせていただいておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。


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