大手ドラッグストアチェーンが店舗を増やす一方で、個人経営の薬局や地域に根差した中小規模のドラッグストアは苦戦を強いられています。

薬局・ドラッグストア:増加傾向と競争の激化

特に、調剤薬局を扱う大手チェーン店は店舗数を増やし続けています。また、医療機関の敷地内にある敷地内薬局(門内薬局)も増加傾向にあります。

一方で、地域密着型の薬局の中には閉業してしまう店舗もあります。閉業の一因として、調剤報酬の低下に伴う減収が考えられます。医療費は年々増加しており、今後も医療費削減のための調剤報酬の改定が行われ、調剤薬局の減収が懸念されます。

このように、業界内での競争激化や調剤報酬の低下により、薬局やドラッグストアは厳しい環境に直面していると言えます。

薬剤師の業務変革:「対物」から「対人」

薬局・ドラッグストアに勤務する薬剤師の働き方は変わりつつあります。

2019年4月2日、厚生労働省より「調剤業務のあり方について」という通知、いわゆる0402通知が発出されました。この通知により、一定条件下で薬剤師以外の方も調剤業務の一部を担うことが可能になりました。

この変更の目的は、薬剤師の対物業務を減らし、対人業務を充実させることにあります。調剤業務の一部を薬剤師以外のスタッフがサポートすることで、薬剤師は医師が発行した処方箋の内容を確認する疑義照会や、患者への薬の効果や副作用の説明などの服薬指導に集中できるようになると期待されています。

対物業務の効率化が進む中で、薬剤師が患者の健康や生活の質向上に関わることを重視するこの流れは、今後一層顕著になるでしょう。また、増大する医療費の抑制も重要な課題であり、この流れにより薬局・ドラッグストアと薬剤師を取り巻く環境は変化し続けると考えられます。

経営面では、調剤報酬以外の収益源を確保することや、薬剤師の対人業務を強化して他の薬局・ドラッグストアとの差別化を図ること、さらに地域の医療・介護への積極的な関わりが求められていくでしょう。

薬局の挑戦:メディカルフィットネス施設開業

メディカルフィットネスとは、狭い意味では医療機関が運営するフィットネス施設、広い意味では医療的要素を取り入れた運動指導を行うフィットネス施設を指します。

広い意味でのメディカルフィットネス施設は、一般企業や介護施設などさまざまな運営母体があります。

調剤薬局を訪れる多くの方は、体に不安を抱えています。医師から運動を勧められている方や、健康のために運動をしたいと思っている方も多いでしょう。例えば、薬局にメディカルフィットネス施設が併設されていれば、薬の処方を待つ間に運動ができ、利用者の健康維持や増進に役立ちます。また、その施設での運動が生活習慣になることで、薬局の利用が増え、収益が上がる可能性もあります。

さらに、ドラッグストアの場合、健康食品やサプリメント、プロテインなどとの相乗効果も期待できるため、メディカルフィットネスと非常に相性の良い事業と考えられます。

薬局・ドラッグストアにメディカルフィットネスを併設

メディカルフィットネス施設に必要な設備や機器は、その施設のコンセプトによって大きく異なります。開業準備の際には、まずコンセプトをしっかりと考えることが重要です。

薬局やドラッグストアの利用者が調剤の待ち時間や買い物のついでに利用することを想定する場合、以下の点が利用者にとって魅力的でしょう:

  • 短時間レッスン:30分以内で終わるレッスンを提供する。
  • 手間の少ない利用:着替えや靴の履き替えが少なくて済むプログラムを設計する。

これらの工夫により、利用者が気軽に利用できるメディカルフィットネス施設を作り上げることができます。

指定運動療法施設:認定取得で医療費控除

メディカルフィットネス施設の運営には必須の認可はありませんが、一定の要件を満たすことで厚生労働大臣認定の「健康増進施設」や厚生労働省指定の「指定運動療法施設」の認定・指定を取得することができます。

認定と指定の取得手順

  1. 健康増進施設の認定
    • この認定を受けることで、指定運動療法施設の申請が可能となります。
  2. 指定運動療法施設の申請
    • 指定を受けると、特定の条件を満たす利用者の施設利用料が医療費控除の対象になります。

要件と準備

  • 医療機関との提携:認定・指定を受けるには、医療機関との適切な提携関係が必要です。薬局やドラッグストアは、近隣の医療機関とつながりがある場合が多く、この点で有利です。
  • 救護室などの設備:安全管理のための設備が必要です。
  • 施設面積:一定の広さが求められます。

認定・指定のメリット

  • 信頼感と安心感:厚生労働省が定めた基準をクリアしているため、利用者に信頼感や安心感を与えます。
  • 医療費控除:施設利用料が医療費控除の対象となり、利用者にとって大きなメリットとなります。

薬局やドラッグストアの特性上、医療機関との連携や医療費控除の対象となることは、利用者にとって魅力的なポイントです。要件を満たすための準備をしっかり行い、認定・指定の取得を検討することをお勧めします。

まとめ

薬局・ドラッグストアのあり方や薬剤師の働き方には、今まさに変化が求められています。競争が激化する中、店舗存続のためにメディカルフィットネス施設を併設することは一つの有力な考え方です。

メディカルフィットネス施設で利用者に運動指導を行うことは、地域の健康課題を解決する一助となる可能性を秘めています。薬局やドラッグストアがこうした施設を併設することは、非常に意義がある取り組みです。

メディカルフィットネスナビでは、薬局・ドラッグストアがメディカルフィットネス施設を併設する際のお手伝いや、メディカルフィットネス施設で薬剤師がどのように活躍できるかのアドバイスを行っています。ぜひお気軽にお問い合わせください。


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